アニメとまんがの間へ 〜アニメーターが描くまんが誌〜
- ネカフェ難民シンイチ
- 2023年8月11日
- 読了時間: 5分
・アニメ雑誌創刊ブームとアニメーターの描くまんが
75年 「OUT」が機動戦艦ヤマト特集を大々的に行成功を納めアニメ主体の雑誌へと舵をきると、それに続けとばかりに「アニメ雑誌」なる雑誌群が次々と創刊されるようになります。「アニメージュ」(78年)、「アニメディア」(81年)、「月刊ニュータイプ」(85年)などアニメの最新情報やアニメーター、声優へのインタビュー作品の研究や批評などを載せ、同雑誌群は熾烈を極めました。
そんな中でも注目すべきが、徳間書店の「アニメージュ」が、行ったアニメーターにまんがを描かせるという企画でした。「アニメージュ増刊」として始まった「リュウ」では「機動戦士ガンダム」作画監督安彦良和氏がギリシャ神話の世界を舞台とした人間と神とが別れる以前の物語「アリオン」(79年)を描き、本誌「アニメージュ」には、アニメ映画「ルパン三世とカリオストロの城」(79年)でマ、ニアから熱烈な支持を受けていた宮崎駿監督が後の同名映画(84年)原作となるまんが「風の谷のナウシカ」(82年)を寄稿。この2人のまんがが成功したために、「アニメーターが描いたまんが」を指向した雑誌がいくつか創刊されることととなります。
・月刊ベティ

「リュウ」や「アニメージュ」に続きアニメーターに漫画を描かせた雑誌としてまず、アニメーション研究団体(アニドウ)が、82年に創刊した「月刊ベティ」があります。
表紙にいしかわじゅん、吾妻ひでお、さべあのまなどといった当時マニアから支持された先生方を中心に、宮崎駿監督や金田伊功といったアニメーターも、筆を握った雑誌といった作りです。
数少ない創廃刊号を名乗った雑誌です。
・ザ・モーションコミック

83年、季刊「アニメージュ増刊」として徳間書店より創刊。「アニメ感覚の新しいコミック」を謳い
アニメーターが描いた漫画で本誌を埋めました。
メンバーは、「ガンダム」「アリオン」安彦良和、「マクロス」美樹本晴彦、「イデオン」湖川友謙、「うる星やつら」「プロジェクトA子」西島克彦、
「テイルズオブジリーズ」「ブレンパワード」のキャラクターデザインも手がけるいのまたむつみ、そして
金田伊功といったアニメーターの方々。さらに細野不二彦、ふくやまけいこなど漫画家の先生方も筆を握っています。
同じくアニメージュ増刊の「リュウ」と共に、金田伊功氏がアニメーションディアレクターを務めるカルト的OVA「バース」のまんが版を掲載した雑誌で、同誌7号にて、アニメ化との告知があります。その他、原作夢枕獏・作画天野喜孝の「アモン・サーガ」も同誌に連載され、その後OVA化されました。
同誌の多くが「アニメーターが描いたまんが」であるため、構図やコマ割りに特徴的なものが多いです。話自体も何やってんのかよくわかんない作品が多い(例:新聞の勧誘の人にパンツを盗まれ、イケメンの騎士っぽい人に助けられる話とか)慣れれば味があっていいです。コマ割りの重要性がわかる雑誌だとも言えます。
というか、安彦良和先生や宮崎駿先生がまんがかけちゃったので(元々両者漫画家志望)
徳間書店が「イケる」と思ったのかそのほかの作家にも漫画を書かせてみようとなったのでしょうか?同誌に掲載された作品にもアニメ化された作品があるため、成功だったのか失敗だったのかといえば失敗ではなかったかのようにも思えます。
同誌は vol5から隔月刊となり 85年のvol11で休刊となりました。
・コミックマルガリータ

83年夏 笠倉出版社から創刊されたのが、隔月刊だったらしいまんが誌「コミックマルガリータ」です。徳間書店「プチアップルパイ」、久保書店「レモンピープル」、白夜書房「漫画ブリッコ」などの流れにあるロリコン色強めのアニメーターマンガ誌です。
SF、アニメ、ニューウェーブ界隈の真筆人を揃え
それらと重複する執筆陣が筆を握っています。
本誌で、前面に押し出されている、かがみあきら先生。ラポートが出していた「カリオストロの城大辞典」(82年)で商業誌デビュー。大塚英志氏らが編集長を勤めるようになって以降の「漫画ブリッコ」では、代表作の一つ「ワインカラー物語」や、看板作家の一人として表紙も担当されました。アニメーターとも関わりがあり「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」(84年)では、メカデザインも協力されています。
同誌も「ザ・モーションコミック」同様、85年に休刊。同じ笠倉出版社から出ている「コミックロリポップ」に、連載作品も受け継がれたようです。
・メディアミックスが当然のこんな世の中じゃポイズン

現在 まんがアニメのメディアミックスは珍しいものではなくなっています。それどころか、小説、映画、楽曲、ゲーム、キャラクター商品、ライブ、聖地巡礼、JRAにまでその触手を展開し、何が主で何が従だか大変わかりずらいことになっています。
メディアミックスの変化に関して、「消えたマンガ雑誌」の藤津亮太氏の見解がとても興味深いです。
徳間書店系のまんが/アニメ誌から、「ザ・モーションコミック」「コミックマルガリータ」に通ずるアニメーターまんが誌から、85年の「月刊Newtype」(角川書店)創刊に代表されるビジュアル中心のアニメ雑誌の到来が、アニメーションスタッフがスターの時代からキャラがアイドル化する時代への変化した といいます。確かに、今考えると80年代前半のアニメーターの紹介記事は非常に熱が入っていました。しかし、あの時代からすると昨今のキャラクターの猛烈なプッシュも異常なものなのかもしれません。
アニメーターがまんがを書くというムーブメントに熱がありました。今後そのような雑誌が創刊されることはなかなかないかもしれませんが、ウェブメディアや電子書籍で何かそういったサービスが開始されるかもしれません。それよりまず、アニメーターの方々の身の健康と、労働環境の少しでもよくなることを願っています。俺たちはそんな変態じゃねぇぞ。
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